趣味の総合サイト ホビダス
 

昭和プラモデル物語(48)




 007シリーズの第21作“カジノ・ロワイヤル”DVD発売に併せたキャンペーンにつられて過去のシリーズを購入した。と言ってもドクター・ノオからダイヤモンドは永遠にまでのショーン・コネリー出演の6作品に限ってである。007が日本で毎年正月ロードショー公開となった頃、ボクは小学校高学年から高校生の時分であったが、既に硬派な映画マニアであった為、お色気とアクションだけをウリにした娯楽作品の権化のような007シリーズは低俗に思え小馬鹿にしていた。それだけに劇場では一度も観たことがない。だがプラモデルを通してみると妙に懐かしくもあり、実は改めてちゃんと観たいものだと常々密かに思っていたのである。40年以上もの歳月を経て観る007シリーズは、ダイナミックなアクションとハイテクを駆使した当時最大級のエンターティメント作品ながら、現在の感覚では間延びしたアクションシーンや如何にも時代がかったハイテクメカが陳腐でさえありやはり時代を感じさせる。そんな中にあってボンドカーと呼ばれる主人公ボンドの愛車は一寸ばかり心惹かれる存在である。
 サンビーム・アルパイン、ベントレー・マーク4に続いて登場したアストンマーティンDB5は、特殊秘密装備の数々でボンドカー最大の人気となったが、それを除いてもやはり魅力的なスポーツサルーンである。
 劇中で使用されたDB5は当時、我が国にもやって来て一般展示公開されたが、さほど興味のなかったボクは見に行くこともなかった。だが、何故か今井科学1/24のボンドカーのプラモデルだけは買った。車体後部にせり出す防弾板はガタがあったし、3ヶ国のレジスターナンバーを表示できる回転式ライセンスプレートは、プレートが紙製ステッカーであった為、回す度に縁に引っ掛かって剥がれてしまった。それでもそれなりに楽しく遊んだ記憶は残っている。またスロットカーブームの折りには米レベルの1/24と1/32のキットが輸入されていたが、比較的安価な部類であったレベルとて輸入品であることには違いなく、おいそれとは手の出せる代物ではなかった。そこに童友社から1/24キットが発売された訳だ。このキットの発売は多少遅めだったように記憶する。つまりは中弛み状態の時に市場に出たので、もう一寸飽きて何を買おうか迷っていたような心の間隙に入りこんできたモデルだった。つまり買ったのである…。ボックスアートは007の劇中カーチェイスシーンが描かれていた。運転しているのは確かにショーン・コネリー(当時の映画雑誌などではシーン・コンネリーと紹介されていた)のボンドのようだ。だがクルマはボディが赤紫色だった…。キットのどこにもボンドカーだとは書かれていなかった。だが当時の日本でアストンマーティンと言えば、それはイコール「ボンドカー」を意味するようなものだった。ボクはサーキットを走るレーシングカーでなければスロットカーとしては認めない「ワタクシ的原則」を貫いていた。だからアルファロメオ・カングーロのようなショーカーやゴーカートのような遊具(そこまで言わずとも全く別ジャンルの競技車輌)はボク的にはNGであった。そこまでイカずともDB5は裕福な特権階級の為のスポーツサルーンで、サーキットを走るには不釣り合いなクルマに思えた。ましてやボンドカーなどのキャラクター性を持っていたら尚更似合わない。だがボクはこのキットを買った。それが今となっては何故だったのか皆目見当もつかない。欲しいモデルが手近にはなかった、それでも物欲は旺盛だった、もしかするとそんなところだったのか…。
 グリーンメタリックのスプレー塗装仕上げがなされたボディはレベルから範を取ったらしく、中々にシャープな良い出来であった。シャシーは平凡な真鍮プレス製だったが、このキットのウリである「特許ブレーキ装置」が備わっていたのが特徴だ。これは後車軸のクラウンギアのハブに付けられたテーパー溝によって生じるスラストによってゴム製ドラムを押し付ける構造で、中々の効果を発揮したとは聞くのだが、このモデルをサーキットに持って行ったことのないボクにはその実力の程は分からない。当時は余り思い入れのないモデルだったが、後年になるとむしろ懐かしく気になるモデルの最右翼となったのは、既に記したように007に対する気持ちの変化かもしれない。のちに童友社ではこのモデルをスケールモデルとして復刻させたので、ボクとしては何とかスロットカーとして復活させたいと願っているのだが、当時のシャシーはジャンクとして残っているものの、肝心のブレーキ装置を紛失してしまっていて未だ実現には至っていない。模型ファンならDB5は今井科学1/24に尽きるのだろう。だがボクにとってはそれ以上に童友社1/24が気になってならぬ。少年時代にはさして琴線にも触れなかった007ジェームズ・ボンドが、今になって一寸気になりだしているところだ。(続く)

プロフィール

平野克己(ひらの・かつみ)

MC誌の最前線を長うお准将に託し現在はフリーランスの予備役として活動中。湘南鎌倉で猫的スローライフを提唱しつつ、国産プラモデル史の編纂に尽力する日々を送る。永年飼ったコブラ427S/Cを手放しMC(Motorcycle…Modelcarsではありませぬ)復帰を密かに目論む。自称昭和プラモ小僧の60歳。座右の銘は心情溢るゝ軽薄さ。

2014年10月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

アーカイブ

 

趣味の総合出版社 ネコ・パブリッシング
Copyright © 2005-2013 NEKO PUBLISHING CO.,LTD. All right reserved.