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モデルカーズ的こころ(62)

 今だから話そう…ボクは巷間伝えられているほどにはフェラーリ250GTOが美しいとは思わない。確かに程よくデフォルメの施されたモデルカーでは美しい造形のように思える。1/43AMR然り、1/24グンゼ・ハイテック然り、である。だが実際にサーキットを走る250GTOをつぶさに観察していると、特に側面のフォルムに何か違和感を覚えた。その違和感が何かと言えば、喩えて言うなら妙に「古臭い」のだ。その古臭さは何だろう。イメージ的に'50年代の匂いがした。そこでハタと気が付いた。真横から見るとフロントウインドウが余りに立ち過ぎているのだ。つまり後方への傾斜の角度が'60年代とは明らかに違うのである。その結果、側面のフォルムが流れるようにひとつになってはおらず、車体を二分して前後に分かれて見えるのである。ああ、それが少しばかり無骨に見える要因なのだなと感じつつ、また同時にボクは'60年代の申し子である事にも気付いたのだった。
 その250GTOに較べてフォードGT40の美しさは想像を遥かに超えたものであった。何しろ少年の頃からコグレ1/16だのマルサン1/32だので固定概念が出来上がってしまっていた。だから荒削りで無骨なイメージばかりが強かった。だが、実物のマシーンを目の当たりにして、その印象はたちまち瓦解した。何と繊細で流麗なフォルムなのか。全体のイメージはそのルーツとなったローラGTにより近かった。しかも、アメリカンV8と言えば、日本ではトルクの塊で低回転でドロドロ唸っているイメージなのだろうが、カリカリにチューンされたフォードのレーシングエンジンは悲鳴にも近い「カーン」という金属的なサウンドを奏でるのだ。まさに「目から鱗」であった。それまで小さなキャパシティのエンジンを目一杯操ることを信奉していたボク(平たく言えばロータスマニアであった)は、たちまちビッグブロック、アメリカンV8に宗旨替えしてしまったのだった。実際、ボクのコブラもセミコンペティション・エンジンであったので、キャブレターのセッティングが温度、湿度と上手くマッチすると、時としてカリフォルニアの空の下で聞いたフォードGTと同じ音質の「カーン」というエグゾーストノートを轟かせた。だが、それは年に2回、春と秋の僅かな期間しかチャンスがなく、たいていは「あ、ヘリコプターが来たのかと思った」と言われたものである。(続く)

プロフィール

平野克己(ひらの・かつみ)

MC誌の最前線を長うお准将に託し現在はフリーランスの予備役として活動中。湘南鎌倉で猫的スローライフを提唱しつつ、国産プラモデル史の編纂に尽力する日々を送る。永年飼ったコブラ427S/Cを手放しMC(Motorcycle…Modelcarsではありませぬ)復帰を密かに目論む。自称昭和プラモ小僧の60歳。座右の銘は心情溢るゝ軽薄さ。

2014年10月

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