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昭和のプラモ歳時記「プラモ小僧走る―回想―」其の13

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 さて、川向こうの文房具屋でボクは随分と当て籤を引いた。古新聞紙で作られた袋の束が紐で綴じられてぶら下がっている。これを一回5円だか10円で引く。中身は見てのお楽しみだ。たいがいは月刊子供雑誌の付録だったペーパークラフトや無断借用しているに違いない映画スターや歌謡スター、野球選手などのブロマイドだった。籤に飽きると木製組立模型にのめり込んだ。種類は多々あったのだろうが、ボクの興味は自動車や戦車ばかりに向いていた。その体裁はパッケージがなく、ハトロン紙やセロファン紙に包んで売られている。それに「下手ヘタ」な実物の絵が描かれたラベルが貼られている。キットの中身は木版をおおまかな形に切り出したパーツと、ゴムのタイヤや木製プーリーの転輪で構成されている。これを原寸図面に沿って形状を削り出して組み立てる。だが中にはボンネットやルーフは「ボール紙をしごいてわん曲させて作りましょう」などという乱暴なものも多かった。いずれにしても実物とは似ても似つかない「変な乗り物」しかできあがらない。その上、ボクは切ったり削ったりするのを知らず、強烈な刺激臭のする黄色いチューブのセメダインでそのままペタペタと組み合わせてしまうだけなので、トラックだろうがスポーツカーだろうが、いずれも積み木のような自動車もどきが完成するだけだった。だからボクの模型に対する印象は「ブリキ自動車や外国製ミニカー」などとは決して対等視することのできない「駄目な玩具」となって根付いていった。それだけにプラモデルのリアリティには心底驚かされたのだった。なにしろくどいようだがバラバラな状態であるのにも関わらず、実物の姿がそのまま想像できてしまうほどの実感が伴っていたのだ。できあがった姿も木製モデルの「おおまか」な造型と「はんなり」とした質感とは違って、なんともシャープでカチッとしていた。「かちっ!」と音がしたこともある。嘘である。
 やがて川向こうの文房具屋から、新たに開店した天野屋へと足を延ばすようになったボクは、最後の駄玩文化を謳歌する。行司軍配だの竹製の弓矢だのペリスコープだのびっくりナイフだのブリキ製の蝉型パッチンだの、もうこれ以上どうしてくれようと言わんばかりの「ちゃちい」駄玩具三昧の日々を送った。それはそれで楽しい日々だった。だが玩具が大好きなボクはどこか充たされぬ気持ちを抱えていた。何かが違った。ボクが本当に求めているオモチャはもっと別のところにあるのではないか。勿論、当時のボクがそんなことを考えていた訳ではない。漠然とした充たされぬ思い、そして無意識のうちに抱いていたケミカルへの憧れ。ボクはプラモデルと出逢うべくして出逢った。それが運命であったのだ。現在ではそう考えることにしている。

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Ni190508_2.Vweb04.Nitrado.Net - Ni190508_2.Vweb04.Nitrado.Net (2014年8月16日 04:05)

初代編集長 平野克巳の「猫の耳に大仏」湘南鎌倉便り: 昭和のプラモ歳時記「プラモ小僧走る―回想―」其の13 続きを読む

プロフィール

平野克己(ひらの・かつみ)

MC誌の最前線を長うお准将に託し現在はフリーランスの予備役として活動中。湘南鎌倉で猫的スローライフを提唱しつつ、国産プラモデル史の編纂に尽力する日々を送る。永年飼ったコブラ427S/Cを手放しMC(Motorcycle…Modelcarsではありませぬ)復帰を密かに目論む。自称昭和プラモ小僧の60歳。座右の銘は心情溢るゝ軽薄さ。

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