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2012年12月25日

如何なる人生においても捨てられぬもの

 人生を一転させる機会に、昨年暮れクルマもオートバイも手放した。もちろん財政的に苦しかったことが主因であるが、心機一転に際してこれまでの生活様式と一度はっきり決別したかったからだ。簡単に言えばリセットである。友人が厚意で譲ってくれた`68ホンダCD250も、そして1台こっきりとなっていた我が家の自家用車メルセデスE320も世俗を絶つようにして放棄した。それにより初老の夫婦は50cc原チャリのみで暮らすようになった。妻の自家用車は以前新車で買ったホンダ・トゥデイ、そして私はといえば一番下の倅が残していった中古のヤマハVOXである。職場への通勤は片道10分程度なのでボックスで充分であった。直ぐに重くて遅いのにも慣れた。ただブレーキが絶望的に利かないのだけは現在に至っても閉口している。だがヘルメットや弁当、着替えなどを持参するので、ボックスの大きな収納力が便利で、これがいよいよヘタったら、再度中古のボックスを買おうかしら、などとさえ考えている。
 暫くは原チャリ夫婦で日々過ごしていたのだが、やはりこの山の中という住環境では、買い物に行くにもスクーターだけでは不便極まりなく、軽いティッシュやトイレットロールならまだしも、猫のトイレ砂などは買っても運ぶのに難儀した。足元に積んだ妻が立ちゴケ(!)するに至り、やはりクルマがなくては日常生活を営むには至極不便と悟り一大決心、奮起してクルマを購入することとした。だが、しかし...以前のように財政的に余裕がある訳もないので、実用一点張りのクルマ選びをせねばなるまいと覚悟もした。軽の中古か、それともヴィッツやマーチなど小型大衆車の中古かと思い悩んだ。しかし、考えれば考えるほど、その選択は自身の人生を卑しめ、日々の生活をさもしいものにしてはしまわぬのかと心配になった。いや、軽四輪や小型大衆車を所有するのが悪いことだなどと言うつもりは毛頭ないのだ。ただ、何ひとつ心身にゆとりのない日々の暮らしの中で、これまで自身のアイデンティティーの証明とも言えたクルマまでをも、経済性、合理性だけで割り切ってしまうのはどーなのよ、と迷いが生じたのだ。せめて少しばかりはこれまでの半生の意地を見せたいではないか。いや、別に他人様の目を気にするのではなく、自分自身とどう折り合いをつけるかの問題なのである。そこで考えた。あらゆる部分を諦めて妥協するにしても、唯一譲れないものは何か。その結論はいたく簡単に出た。屋根が無いことである。元来が根っからのスポーツカー好きなのである。元々病いで弱った父への親孝行のつもりで買ったメルセデスであったが、190E、そしてE320とセダンを2台乗り継ぎ、少なからず昔の虫が騒ぎ始めていたこともあった。それでも経験によってメルセデスが良く出来たクルマであることは学習していた。何も楽しくはないが、何ひとつ不満を感じさせない。過激な(あるいは偏向的な...)ドライヴィングプレジャーを求めないのであれば、メルセデスのSLKが必然的な選択肢のように思われた。だがしかし...以前のワタシではないのだ。夢物語にうつつを抜かしているいとまはない。ならばBMW Z3は?...未だ言うか。そんな感じである。永年ワタシのクルマの面倒をみてくれている友人からは「コペンという選択肢はないのか?」と諭されたが、私個人の詰まらぬ意地からもやはり軽四輪はNGであった。そこで全ての折衷案として残ったのがマツダのロードスターであった。家族の為にずっと自身のクルマ趣味を封印して来たおとーさんたちが、最後に「こういうのに乗ってみたかった」と満足する類いのクルマと感じて来たワタシだが、もう残された選択肢はないように思われた。そうなればモデルのチョイスもいたく簡単に決まった。初代のユーノスNAは最もコンセプトに忠実でしかもスポーツライク、ロードスターとしてはベストチョイスなのかもしれないのだが、如何せん今やネオヒストリックカーの仲間入りで、うっかりするとプレミア価格で高い。そして何よりもワタシはあのスタイルが嫌いである。ならば現行モデルNCはと言うと本来のコンセプトからすると「どこへ行こうとしてるのか?」判らない車格と性能のクルマになってしまった感がある。折角培って来たロードスターのテイストが現行モデルではあらぬ方向へ向かっているような気がしてならない。何よりもあのスタイルはない! 絶対にない!! そこでシリーズ中、最も不人気車と言われる二代目に絞った。初代より大きく重くなったマツダ・ロードスターNBはマニアには不評であったと聞くが、既におっさんのワタシはそれほどのハシリを求めてはいない。どうせオートマを買うのだ(笑) シリーズ中では不人気でもあり年式もこなれているので価格もほど良い。そんな訳でNBの1.8VS(NB8C)に乗っている。平成13年初年度登録車、ワタシの車歴の中では群を抜いて高年式車である!!(苦笑...) 想像していた以上にパワフルなのも悪くない。ハイオク仕様だが燃費も驚くほどにいい。ただ所詮は1.8ℓのキャパしかないのでエアコンを使うと急激に燃費は悪くなる...。スポーツカーらしいハンドリングも、スパッと切ったあとで微調整している日本車らしさを気にしなければ軽快である。幌もものの数秒で上げ下げできるし(酷過ぎるのに乗っていたせいだろうが) ただシート背面に+2やらラゲージスペースなどといった半端な空間を持たせず潔くリアバルクヘッドが立ちはだかっているせいで、シートのスライド量が圧倒的に不足していて、ワタシにはコクピットが狭い。何よりもシートバックを倒せないのが辛い。それ以外は概ね満足している。見慣れれば(あくまでも見慣れれば、である...)スタイルもシリーズ中では一番均整が取れている。今更旧いロータスなど乗る気にもなれないロートルにとって、中々悪くない選択であったと思っている。そして何よりもこのクルマになってから、インパネの水温計も油圧計も(燃料計さえも...)気にせず滅多に見ることのなくなった安心感...壊れることが前提の機械モンなんて、もうこの歳になったら怖くて日々付き合ってなんかいられませんぜ...。

投稿者 平野克巳 : 2012年12月25日 19:49

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