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またひとつ思い出が消えていく

IMG_5812.jpg 鎌倉ほびいが無くなった。いや、厳密に言うなら鎌倉ほびいの跡地が取り壊され再開発されるという事だ。ローカルな話題で恐縮だが、このかつて鎌倉の外れにあった小さなプラモデル屋こそが、ボクたちの青春時代の思い出と言うか、ボクたちにとっての梁山泊であり新天地でもあった。ここでボクたちは「模型屋のおいちゃん」と出会い、現在も親交の続く仲間たちと出会った。かつて`70年代には東京のタリーホーと共にPPC/プラプレーンコンテストの賞を二分し合った、全国的にも名の知れた模型屋でもあった。
 ボクが現在の仕事に就く切っ掛けとなったのも、この店でモデルアート社の渡辺編集長(当時/故人)と出会ったからに他ならない。店主の永井 保さんは初期のモデルカーズにおいても「ディオラマ、その小さな世界」で木彫りの辣腕を揮われたので、ご記憶の読者諸氏も多かろう。その通称「おいちゃん」が83歳で逝ったのは2009年6月の事だが、その大分前から鎌倉ほびいは閉店廃業していたので、それ以降は建物だけがそのまま残されていたに過ぎない。それでもボクたちはその前を通る度に、在りし日の鎌倉ほびいを偲ぶ事だけは出来た。いわば残された建物は石碑のようでもあり墓標のようでもあった訳である。そうした記念碑のようなものは誰にも在るだろう。しかし、偲ぶよすがを失えば、回想の機会も激減し記憶も曖昧になっていくのが必定だ。心の中に追憶が残れども、冷めていくスープのように次第に湧き立つ湯気も立ちのぼらなくなっていく。恐らくはたちまちに小洒落たマンションにでも姿を変えて、鎌倉ほびいもおいちゃんも忘却の彼方へと過ぎ去ってしまう。そして後には何も残らない。世の中とはそうしたものだからだ。森羅万象すべからず土に還るのだ。しかし、だからといってそうした理屈だけでは余りに切なく余りにうら寂しい。せめて些細なものでも良いから何かが残って欲しい。それが人間の性というものではないのか。そのことをして女々しいと言うなかれ。

プロフィール

平野克己(ひらの・かつみ)

MC誌の最前線を長うお准将に託し現在はフリーランスの予備役として活動中。湘南鎌倉で猫的スローライフを提唱しつつ、国産プラモデル史の編纂に尽力する日々を送る。永年飼ったコブラ427S/Cを手放しMC(Motorcycle…Modelcarsではありませぬ)復帰を密かに目論む。自称昭和プラモ小僧の60歳。座右の銘は心情溢るゝ軽薄さ。

2014年12月

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