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ささやかな望み絶たれて、そんな歌を思い出す

 情熱は醒め気力は萎えた。年齢のせいではあるまい。鬱だとも思っていない。ただ生きる指針を見失いつつある今、充実した日々ではなく、満ち足りた人生でもない。別に贅沢をしたいとは思わない。ただ平凡な暮らしが成り立ちさえすればそれで良い。だが、それもかなり難しい。最も貴重な財産であると思っていた友人たちも、その殆どが逝ってしまった。仕事について、趣味について、人生について語り合い、共有し合える戦友たちも今はもう居ない。最も愛した猫も記憶の中にしか居ない。それでも別に人生を悲観している訳ではなく、生きるとはそんなものだと、ただ達観している。
 好きな仕事を失い、好きなクルマやバイクを失い、人生の最大の喜びは遠退いて行った。酒や女、博打に憂さを晴らそうとは思わない。ただ淡々と枯れて行く自分と向き合って生きている。どこかで「人生の盛りを過ぎれば、あとはただ失う一方なのだ」という台詞を聞いたことを思い出す。恐らくそれは真理なのだろう。人生とはそんなものなのだ。だがつまらぬ。実に面白くない。老いるという現実にマイナス要因ばかりを重ね合わねばならないようでは、生きている価値もない。
 生活の為、日々アルバイトに精を出していることは相変わらずだが、一日の殆どを過ごす職場ではジャニーズと韓流、アウトレットやスーパーの安売り情報、愛犬自慢、夫の愚痴ばかりが蔓延している。最近、入って来た新人さん(人生においては余り新人さんでもない...)に前職は何かと聞かれ、面倒なので「極道だった。刑務所から出所したあとは、暫く雪深い北国で此処で共に働いているO田島さんと小さな居酒屋を営んでいた」と物語ったところ、イメージにぴったりですね、と妙に感心されてしまった。まあ、もうどうでも良いような気がしている。極道だったと言えば極道のような半生を過ごして来たのだ。決して真っ当な生き様だったとは言えまい。過去は過去でしかなく、それを懐かしむ気持ちもない。自負も後悔もない。然りとて過去に戻りたいとも思わない。ただ淡々と今を生きている。世間の片隅で目立たぬようにひっそりと。病葉を今日も浮かべて、街の谷、川は流れる...仲宗根美樹をもう誰も知らねえか...。

プロフィール

平野克己(ひらの・かつみ)

MC誌の最前線を長うお准将に託し現在はフリーランスの予備役として活動中。湘南鎌倉で猫的スローライフを提唱しつつ、国産プラモデル史の編纂に尽力する日々を送る。永年飼ったコブラ427S/Cを手放しMC(Motorcycle…Modelcarsではありませぬ)復帰を密かに目論む。自称昭和プラモ小僧の60歳。座右の銘は心情溢るゝ軽薄さ。

2015年1月

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