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高齢者文化がやって来る

 プラモデルが根付いて既に半世紀。かつては永遠とも思われたその繁栄も、今では無惨なまでに衰退してしまった。それは時代の変貌と推移の為せる業であるから致し方ない。しかし、滅ぼうとしているものをただ傍観しているだけでは、絶滅しようとしている稀少動物を指をくわえて見て見ぬ振りをしているにも等しい。業界の片隅で禄を食んできた我が身としては、微力ながらも何か絶滅を抑止する為の策を講じることができないものかと考える。
 その発祥においてプラモデルは単に子供の玩具であるに過ぎなかった。しかし、今日では専門的な知識とスキルが必要とされる大人のホビーへと変った。それはそれで良かったのだと考えるとして、問題なのは新たな後継者人口が増えないことにある。何れの世界も後継者の居ないことが深刻化している時世ではあるが、プラモデルの世界もそれが最も深刻な問題である。ガンダムブーム以来、プラモデルそのものに求めるユーザー意識が激変し、更にはゲームによって完全なプラモデル離れに拍車がかかってしまった。
 子供たちがプラモデルに興味を示さなくなって、次世代への新陳代謝は完全に滞り、今や「かつてのプラモデル世代」が刻一刻と年齢を重ねているに過ぎない。つまりプラモデルにも高齢化の波が押し寄せている訳だ。かつての「ソリッドモデル」と呼ばれた木製模型と同じ経緯を辿っている。ただ昨今の高齢者は元気である。老人となったれば趣味はゴルフと盆栽、口ずさむのは演歌と民謡、なんて時代はとうに廃れてしまった。Jazzさえも古臭いと感じるようなRock世代である。プログレッシヴやヘビメタに啓示を受けたような「ロックじじい」であるから、ジーンズに革ジャンなんて風体も当たり前である。サザエさんの波平さんみたいな年寄りなど今は居ない。
 ただ、年齢を重ねれば確実に老化することだけは否めない。どんなに体力、気力が若く保たれていようとも、やはり生物としての衰えはやって来る。目に来る。老眼である。眼鏡やルーペで補正しても、細かいものが見え辛くなるので疲れる。指先の感覚の繊細さが若干鈍る。ピンセットよりも自身の指先のほうが確かだと思っていたのに、小さなパーツを取りこぼすことが増える。長時間じっと張り詰めた作業をし続けるのが辛くなってくる。それは肉体的な理由だけでなく、集中していられる精神力の低下も影響している。
 プラモデル作りが面倒になる。それどころか苦痛にさえ思えて来る。それは若い頃と同じようにプラモデルを作ろうとしているからではないのか。「あの頃は出来たのに...」「かつては面相筆で手描きしたのに...」 昔を思い出しては、ヘタになった自分にがっかりし、モデルに愛着も満足も感じられなくなっていく。だが、考え直そう。今の自分にはこれくらいしか出来ない...それで良いのではないか。何も卑下する必要などないのだ。日本人の大好きな精密という言葉の呪縛から解き放たれて、自由にプラモデル作りを楽しむべきだ。1/24を1/16に。サイズアップするのもひとつの手法だろう。手描きペイントを自作プリント・デカールに置き換えるのも現実的だ。修正改造しない、と割り切るのもひとつの見識だろう。
 専門雑誌を見れば相も変わらず「1/700戦艦にエッチングの手摺」など取り付けている。どこまで実物をリアルに再現可能か、徹底して改修加工を施し、ディテールアップに血脈を挙げている。それはそれで結構である。それもひとつの表現手段であるから。そうした主義を決して否定はしない。しかし、それを常に押し付けるような誌面造りは止めてくれないか。製作サイドのマスターベーション的な記事ばかりが王道である、みたいな方針を考え直してはくれないか。誌面の隅々から「このレベル以外は相手にしねえよ」みたいな自己満足だけが匂うのだ。いつまで高度成長時代の「若者偏重主義」にどっぷり浸かり続けているつもりなのか。時代は変貌し続けている。求められているものも激変する。ましてや雑誌は生き物である。そうした直前の事実に気付かないまま、自動車雑誌業界は衰退しほぼ絶滅してしまった。今、模型雑誌業界も同じ轍を踏もうとしてるように思えてならない。もう一般ユーザーはとっくに気付いているのに、業界人だけが目の前の危機的状態に気付いていない。自らの自浄作用もなく意識改革もできずに居る。ただでさえ3Dプリンターが一般化、普及化しようとしているのが現状なのだ。目覚めよ、模型雑誌業界。滅んでからでは遅いのだ。

プロフィール

平野克己(ひらの・かつみ)

MC誌の最前線を長うお准将に託し現在はフリーランスの予備役として活動中。湘南鎌倉で猫的スローライフを提唱しつつ、国産プラモデル史の編纂に尽力する日々を送る。永年飼ったコブラ427S/Cを手放しMC(Motorcycle…Modelcarsではありませぬ)復帰を密かに目論む。自称昭和プラモ小僧の60歳。座右の銘は心情溢るゝ軽薄さ。

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